SSCとは
理念と目的
サステイナビリティ(持続可能性)の実現は、21世紀の地球環境と人類社会の存続に関わる重要な課題です。この課題に果敢に挑戦しようとする俯瞰的で超学的な学術体系が、サステイナビリティ・サイエンス(サステイナビリティ学)です。
サステイナビリティ学連携研究機構(IR3S)は、2005年に科学技術振興調整費戦略的研究拠点育成プログラムに採択された5年のプログラムであり、この分野をリードする日本の大学・研究機関の強固なネットワークを形成し、地球・社会・人間の各システムと、それらシステム相互間に破綻をもたらしつつある現象の解明と問題の解決を目指して活動を行ってきました(図1)。
2010年のIR3Sのプログラム育成期間終了に伴い、これまでの研究教育・普及啓発活動を維持し、さらに発展させるとともに、政府・自治体・企業・研究機関・NPO等との連携を強化し、技術革新と社会変革に向けた実践活動のさらなる展開を図るため、IR3S参加大学や協力機関とともに、一般社団法人サステイナビリティ・サイエンス・コンソーシアム(Sustainability Science Consortium)(略称SSC)を設立しました。
2020年から2023年に及ぶ新型コロナのパンデミックは、サステイナビリティ学の研究にも大きな影響を与えました。人間システムの問題が大きいことを再認識しました。人間は社会を作って生きていかなければなりません。しかしながら、社会を作ることにより必然的に感染症が広まります。一方、人との接触を断てば、感染は減るかもしれませんが孤立感・寂寥感が深まります。世界各地での都市封鎖の経験が多くのことを教えてくれています。これらの諸問題を、2項対立として把握するのではなく、我々の生存様式のあり方として把握しなおす必要があります。
SSCは、サステイナビリティ・サイエンスの視点に立脚した研究教育の推進を通じての新しい人材育成を先導するとともに、広く市民社会にネットワークを広げ、持続可能な社会形成のための普及啓発活動を推進し、政府・自治体・企業・研究機関・NPO等と協働で、サステイナビリティの実現に向けた実践活動を展開することを目的としています。
※サステイナビリティ学連携研究機構(IR3S:Integrated Research System for Sustainability Science)
IR3Sは、2005年科学技術振興調整費の戦略的研究拠点育成プログラムとして採択され、5つの参加大学(東京大学・京都大学・大阪大学・北海道大学・茨城大学)と7つの協力機関(東洋大学・国立環境研究所・東北大学・千葉大学・早稲田大学・立命館大学・国際連合大学)からなるサステイナビリティ・サイエンスに関する世界的な研究拠点です。サステイナビリティ・サイエンス・コンソーシアムは、このIR3Sの枠組みを継承し、さらなる発展を期するものです。なお、IR3Sは、引き続き東京大学の内部組織としてサステイナビリティ・サイエンスに関する国際展開を図る拠点として活動を続けます。
理事長挨拶
地球持続性の構築を目指すサステイナビリティ学の人材育成・普及啓発・実践活動を目指して
2020年初頭のダイアモンド・プリンセス号での新型コロナの感染を契機として始まった新型コロナ感染は、エネルギーや物質を大量に消費する現代社会の行く末に一抹の危惧を抱いていた人々に大きな衝撃を与えました。改めて、人類と感染症の共存の問題を投げかけました。一般社団法人サステイナビリティ・サイエンス・コンソーシアム(Sustainability Science Consortium)(略称SSC)の目標は、21世紀の地球環境と人類社会の存続に関わる課題に果敢に挑戦しようとする俯瞰的で超学的な学術体系を確立することです。従来は、エネルギー、資源、生態系、そして、人間の尊厳などを軸に考えてきました。しかし、今度のコロナパンデミックで、感染症の問題と、人と人とのコミュニケーションの問題を新たに加える重大な問題として認識しました。
2020年から2022年の3年間は、コロナ対応で活動が十分に展開できませんでした。2023年度は、やっと活動が正常に戻ることが出来ました。これを機会として、新たな活動に取り組んでゆく所存です。皆様のご支援・ご鞭撻をお願いいたします。
2024年3月1日
理事長 住 明正
東京大学未来ビジョン研究センター特任研究員
活動内容
1. サステイナビリティ学共同教育プログラムの推進
サステイナビリティ学共同教育プログラムは、サステイナビリティに関わる問題構造を俯瞰的に理解し、持続可能社会のビジョンとその実現に向けた理論的および実践的サステイナブルな社会を構築させるために視座を涵養するとともに、国際的に活躍できる人材専門家を育成するプログラムです。
このプログラムを通じ、サステイナビリティという概念の持つ多様性・国際性・学際性をよく理解し、社会的活動の実践の中でサステイナビリティの実現に向かって行動できる人を世界に送り出します。それは、世界の大学におけるサステイナビリティ教育のベンチマークとなるべきものです。
共同教育プログラムの内容と修了認定要件
SSC共同教育プログラムは、サステイナビリティ学の多様な分野を分野横断的に網羅するだけでなく、各大学がそれぞれの長所を生かして構築した特徴あるカリキュラムの集合体として機能し、幅広い選択肢を持ち常に進化しつづける教育プログラムです。この教育プログラムは参加大学共通のコア科目と、各参加大学で実施している部分からなります。
所定の単位を取得した学生にはSSC共同教育プログラム修了認定証が授与されます。2009年以降、これまでに470名以上に修了認定証が授与されています。
共通コア科目(1科目)
・サステイナビリティ各分野のトップランナーによる「サステイナビリティ学最前線(Frontiers of Sustainability Science)」を共同教育プログラム参加大学間で共同実施。各大学をオンライン講義システムで繋いで実施。
各参加大学実施部分
・SSC共同教育参加大学は、それぞれ独自にサステイナビリティ学教育プログラム(メジャーマイナー問わず)を実施していること。
・この中から以下の科目を共同プログラム科目とする。
俯瞰型科目(2科目)、サステイナビリティ学関連科目(2科目)
2. 研究・開発事業の実践活動推進支援
国内外の教育研究機関・経済産業界・行政機関・市民・NPOやNGOなどと積極的に交流し、持続可能性に関する共同研究、共同開発プロジェクト事業への展開といった実践活動を支援します。
SSCにおける研究・開発テーマ例
・低炭素都市を目指す自治体の長期ビジョン構築に向け、SSC会員の大学・研究機関や企業が協力し、地域の実情に即した大胆な将来のシナリオの作成を行うとともに、その成果を広く社会に発信する
・SSCとして、自治体・企業・農林業者・NPO等が連携した新たな農村地域の地域管理システムを提案し、SSC会員の自治体における地産地消を前提とした地域活性化のための基本計画づくりに役立てる
関連大学における活動テーマ例
茨城大学 サステイナブルな環境共創を志向する教育研究拠点の構築
気候変動対応部門 気候変動影響予測に基づく適応・緩和研究から社会実装への先導
流域圏環境部門 流域圏の環境保全とサステイナブル生態系サービスの先導
農業・生態系環境適応部門 農業生態系変動への適応×DX活用による環境保全・資源循環型技術の先導
人間・社会経済部門 環境共創のためサステイナブルな人間・社会生活の先導
大阪大学 課題解決と未来社会に資する新たなイノベーションを生み出す分野横断型の研究開発や新学際領域の開拓と、
これらの分野をけん引する次世代リーダーの育成を推進
国際連合大学 開発途上国を中心とした国際メタ・ネットワーク形成
千葉大学 農とウェルビーイングの観点からの地域のサステイナビリティの構築
東京大学 東京大学の知性を結集した世界的なネットワークの拠点
3. セミナー・シンポジウム等による普及啓発活動支援
サステイナビリティ・サイエンスの普及啓発のため公開セミナー・シンポジウム等の計画あるいは開催に関し、広報も含む支援活動を実施します。
4. 広報・出版・頒布
サステイナビリティ・サイエンスに関する動向やイベント情報等の広報並びに出版及び出版物の頒布を行います。
組織概要
SSCの部会の主要事業
・研究・開発及び啓発普及部会
個別プロジェクト(企業・自治体等との共同事業)及びシンポジウムや研究会などの開催
・教育部会
サステイナビリティ・サイエンスのSSC共同教育プログラムおよび修了認定
SSC組織概要